保育士残業問題はどこの園も同じ?行政機関に伝えても解決しない?
保育士の今出川麗子です。
このコンテンツでは下記の方が対象です。
- 残業が多いことにうんざりしている保育士さん
対象者は続きをお読みください。
ここでは保育士のサービス残業について解説します。
残業のことは保育士の人は最も気にかかる1つでしょう。
仕方がないと感じている人もいれば現在、残業が多すぎてどうにかしたい、と思っている保育士の人もいるはずです。
残業の詳細は たしかに残業は多いけど 保育士にはプライスレスな瞬間もある!(その1) をご覧ください。
保育士の残業は行政機関に伝えても改善しない?
先日、ある自治体において、労働基準法違反の是正勧告が出されました。
その自治体は待機児童ゼロを目指し、保育所の拡充を図っていると、注目されてきたところでしたので驚かれた方も多いでしょう。
労働者を組織団体が、その団体に寄せられた「保育士からの相談」を集計した結果、約80%の保育士が残業問題などの勤怠について触れられており、 休憩が取れないことや残業代が支払われていないという事実が判明したのです。
全国的にも類似した内容が多く、労働基準法違反の問題になりかねない実態があるようです。
保育園や幼稚園、小学校を含む、いわゆる子どもの教育に関わる機関では、「子ども」に関わる仕事として、多くの業務があります。
この件は「今日中になんとかしなければ」という思いで仕事をしている先生方の熱意の表れだともいえます。
また、その勤務実態を見ますと保育所では特に園児から目を離せない、誰かが見守っていなければならないという状況の中で、休憩が取れない、そして、その残務としてサービス残業ということになっているのです。
サービス残業が起きる原因とその対処法
やればやるほど、あれもこれもと、保育士としてしなければならないことや園児たちのためにしてあげたいことがうまれてきます。
そう思うことが、一人前の保育士として必要だということは心しておいてください。
保育士は残業や持ち帰り仕事が多く、激務だといわれます。
どの業界でもそうですが、今では職員の残業時間そのものを減らす動きが出てきています。
しかし、なかなか簡単に、5時になったから帰りますというわけにはいかず、とりわけ保育園では、保護者対応や明日の準備、年中行事の準備などで残業は必然的に発生します。
この残業に手当がつくのならば、ある程度はがまんできるのでしょうが、サービス残業となりますと、いくら園児のための残業とはいえ意欲そのものが失せてしまうものです。
そこで、サービス残業が起きる原因とその対処法についてご紹介します。
保護者対応
保護者の方の都合の時間に行わなければなりませんから5時退勤予定が6時になる場合もあります。
多くの場合が、その日にあった園児に関しての出来事についての保育士の対応に対してのものです。
保護者対応については保育士の保護者対応での失敗!保護者との接し方はどうすれば?をご覧ください。
年中行事の準備
作品展などの場合、作品を並べるだけではありません。
例えば「海」をテーマにした場合、園児はお魚を作りますが、そのお魚たちが華やぐように背景を考えたり、海草などを作ったりしていきますので時間がかかるのです。
作品展を楽しみにされている保護者の方に見ていただくのですから、見栄えも大切にしなければなりません。そんな時に、(あともう少し…)という思いでサービス残業をするのです。
連絡ノート・個人ノートなど
しかし、個人記録は、日々しっかりと書いておかなければなりません。
あとで思い出して書けばよいと思っていたらだめです。
思い出せない場合が多いです。
連絡帳については保育士の連絡帳が保護者に伝わらない 伝わらない事の悪影響をご覧ください。
対処法
どの場合も残業をやめて帰るわけにはいきません。
業務そのものについても大切なものですが、それとともに、周りの保育士さんも同じように残業をするのですから帰りにくいということもあります。
そこで、次のような工夫をしましょう。
仕事の分担の提案…計画性
例えば、1歳児クラスから5歳児クラスまでがそれぞれチームになることができますね。
そのチームで役割分担をすれば、ある程度の業務が分担されます。
いろいろな保育園で実践されているのですが、それを月初めの話し合いで計画として共有することが大切です。
日々、瞬時のメモを活用
忘れないようにメモをするのですね。
これは、保育士にとっては非常に大切なことです。
メモ帳を常に身に付けて、
「Aちゃんがうんていでぶら下がれた!」
「Bちゃんが泣いたのは、おもちゃを取られたから。」
瞬時に対応してメモをするってたいへんなことですが、これをしっかりしておくことで、保護者対応や個人記録記入の時間を短縮できるようになります。
日、週、月で優先順位を決める
- Aちゃんの保護者にけがの連絡
- 明日のお誕生日会のしおり作成・完成
- 明日の主任会議の資料コピー
というようにしておきます。
②までは今日中にしなければならないこととして、自分にノルマを与えます。
計画は立てたものの、緊急の保護者対応も入ってくる場合もあります。
保育士という仕事に就いた以上は仕方のない対応です。
そこで、この仕方のない対応が起こった場合には、園側に残業手当というものを考えていただくようにするのもいいでしょう。
効率を十分に考えて働いていることを示した上で残業が発生するのですから、園に相談してみるといいでしょう。
残業代や残業時間はどれくらい支払われる行うケースが多いのか
残業代については、保育園の事情によってかなり違います。
残業代を支給してくれる園でも、残業した分だけ支払うということはありません。
園の方針で上限を設けたり、月の手当を決めてお給料に一律に特殊勤務手当などという形で支払ったりしています。
ですから、保育士の就職や転職の際には、残業というものについて十分園側から聞いておく必要があります。
では、残業のない保育園を探すのがいいではないかと思われるでしょう。
「残業なし!」と書かれている求人票も目にしますが、実際に働いて見ますと、なかなか残業をしないで帰れる日数は少ないのが現状です。
そこで、前述の「サービス残業が起きる原因」を見直すことが重要になります。
自らの仕事の見直し、チームとして業務について分担するなどというアクションを起こすことが必要です。
残業問題は「働き方改革」としても社会問題になっていますので、残業を減らす、なくす方向に向かっているのは事実です。
保育士でなくてもできる仕事内容は、事務の方を雇うなどして解決に向かっている園もあります。
「違法である」かどうかが難しい判断だけに、 多くの保育士さんが「仕方のないこと」として改善をあきらめている、 園長先生にも言わない、あるいは言えないような実態になっているのです。
労働基準法は、そんな保育士の強い味方である法律 です。
この労働基準法をもとにして、労働者が訴えることができるのです。
行政機関に伝えれば改善できるのでしょうか。
勤怠の管理は園によって異なります。
最近では、ICカードリーダーなど、電子化されていますが、 まだまだ紙媒体の管理になっているところもあるのです。
少し前までほとんどの保育園で行われていた出勤印を捺印するという紙媒体の方法では、遅刻、早退の申請は行われていたようですが、残業というものの申請は聞いたこともありません。
残業代未払いの被害に遭っていた保育士さんの例です。
勤怠管理をICカードで行っていながらも、保育園によっては本人の残業申請がなければ支払われないという実態があるのです。
それは、残業申請に制限があることによるのです。
残業申請を行うにあたってのルールは次のようなものです。
- 開園・閉園作業は労働時間には入れない
- 保護者向けの「クラス通信」は一枚20分まで
- 職員会議は1時間 とする(オーバーしても1時間)
このような残業申請に制限があるというのです。
例えば「クラス通信」についてみてみましょう。
一枚15分しか残業が認められないというのはおかしいですね。
保護者向けの通信ですから、言葉、内容に慎重にならなければいけません。
クラスだよりについては もう悩まない!月&クラス別。保育園のクラスだより書き出し文例 をご覧ください。
また、「カット」も入れて読みやすくしなければなりません。
他にも「通信」ですから、いろいろと配慮しながら書くのですね。
15分では絶対に不可能ということになります。
このように、保育士さんの勤怠、残業問題に関わっては多くの問題が起こっているのです。
もちろん、労働者である社会人はある程度のサービス残業は覚悟しています。
しかし、 実働時間よりもかなり多い時間働いているのに申請できないという現実 に直面している保育士さんが多いのです。
また、子どもに接している時間以外はサービス残業にされることが多かったという保育士さんもおられます。
加えて、年中行事は園によってさまざまですが、園によってはこいのぼり大会や敬老の日の会など、その準備にかなりの時間が割かれます。
このようなイベントの準備は、保育園の場合、園児が帰った後の作業が多くなり、残業ということになってしまうのです。
そんなときに、残業ができないからといって持ち帰り残業をせざるを得ないという場合もあります。
これらの園内のルールについても、労働基準法違反の範疇になります。
ですから、「残業代未払い」ということで 労働基準法第37条に触れるという是正勧告が出されているといる のです。
これに似た事例は、今後保育園が増えていく、保育士が増えていくに伴って増えていっています。
このように、行政(労働基準監督局等)に対して訴えることはできます。
行政機関に伝えれば、ある程度は改善します。
しかし、そのためには 行政を動かすだけの「証拠」が必要になります。
そういう大げさなことは、あなた一人の力ではできないですから、ぜひ、専門家への相談をおすすめします。
労働組合があれば、そこに相談するのがいいでしょう。
しかし、その行政への手続きや今後のあなたの身のふり方等をしっかり考えた上で行ってください。
保育士の残業問題。どこの園も同じ?
保育士の残業問題を3人の保育士さんのお話をもとに考えてみましょう。
A保育園…
シフト制、 普通に8時間の勤務ということですが、とても8時間では収まりません。
朝も早くから園児の出迎えの準備、園児が帰った後には明日の準備です。
8時間というと、園児の対応と保護者とのお話で精一杯の状況です。
B保育園…
シフト制、8時から19時までの3交代制です。
夜19時までの担当になったときには、どうしても19時は過ぎてしまいます。
ただ、主任の先生の配慮もあって19時を回ったら、「ここまででいいよ。」という声かけをしてくれます。
用事がある時にはその時点で帰れます。
C保育園…
シフト制、残業ありません。
理由は保育時間が短いからです。
18時には園児は帰ります。
勤務時間が19時ですので、1時間は集中タイムとして、明日の準備などができるのです。
C保育園の実態をみてみるとわかりますが、保育園の配慮というのでしょうか。
残業時間を見越して、勤務時間の中に組み入れているのです。
こういう園は少ないのですが、保育園が、園児のことも保育士のことも考えてくれるなら、こういう園の形になるのでしょう。
ただ、18時終了ということは、やや園児の保護者が不満を持ってしまうかもしれません。
「あの園は18時までしか預かってくれない」というように。
この3つの例のように、残業問題の実態は異なります。
はっきり言って、 その園の園長先生、あるいは園の経営者の思いによる ということがいえます。
そういう方が現場をよく知っている方なら、保育士の労働の過酷さも分かっていただけますので、B、C保育園のように、それなりの配慮はしてくれるでしょう。
保育士の残業問題で私はこんな試みをした(体験談を含む)
今保育士を目指しておられる方も多い中で、保育士の残業、持ち帰り問題が多く述べられ、保育士という仕事そのものの魅力がなくなっていくことを心配します。
ただ、どの保育園であれ、実際に働いてみないと内情は分からないのも事実です。
先輩保育士さんの中には、保育士の残業問題で次のような試みをされています。
ご参考になさってください。
Aさん
これから保育士を目指そうとしている方には、特に保育園専門のサイトや保育士転職サイトのサービスを利用されることをおすすめします。
私は、同時に3つ応募してそれぞれの園の様子を探りました。
就職先のことを徹底して調べ、「残業なし」や「残業が少ない」など、特に残業のことを中心に調べたり聞いたりしてみたのですが、それだけではわかりませんでした。
内情について教えてはくれません。
ですから、判断材料にしたのは、その保育園の行事内容です。
行事が工夫されているのは、園児にとっても楽しく必要なことでしょうが、行事が多いあるいは工夫されているということは、残業も多いということになります。
私は、園児のために一生懸命働きたい気持ちは人一倍強いと思っています。
仕事が多いからいやなのではなく、体を壊したくはないし、残業も多少は仕方ないと思いますが、 ひどい扱いをする園もあるようなのでこういう選び方をしました。
転職サイトの場合は、サイト自体が間に入ってくれることで、保育士側の味方になってくれているように思います。
また、転職サイトでは実際の残業時間(あくまでも園側の情報)をチェックできます。
しかし、よく調べてみますと、サイトの中でも
- 「残業なし」
- 「残業少し」
- 「ご本人の要望も考慮して」
- 「8時間の勤務で交代制」
- 「実働8時間」
- 「子供の数、預け時間による」
などの表記があります。
この表記に嘘はないでしょう。
ただ、内部事情は見えないということだけは頭に置いてくださいね。
きっちりした勤務の園に転職希望の方は 保育士求人プロ をご覧ください。
Bさん
「転職活動中に、多くの園を候補にしました。
今働いている園を選ぶときに留意したことは、第三者目線で職場を確認するようにしたということです。
努力はしました。
最近の保育士の残業問題や待遇について、友人や知り合いの方、保育園訪問、直接電話をかけたこともあります。
残業代の問題は、園によってすでに決まっていますので、それを変えるとなると、職員が一団となる必要があります。
でもそんなことはなかなかできません。
園児という大切な宝物を預かる仕事だからこそ、あまりそんなことは言いたくないのも事実です。
であれば負担なく働くことができる職場です。
私が園の実態を見聞きした限り、実際、待遇面には大きな差がありますよ。
Cさん
延長保育が多い施設でした。シフト制になっていましたのに、夜に人が少ない施設だったのです。
夜に勤務していると残業が非常に多くなってしまいます。
求人情報にもそんなことは書かれておらず、がっかりしました。
Cさんの体験談にありますように、 その施設の特性がありますので、シフトパターンがどう組まれているかも判断のポイントです。
そこで、園の特徴を見分けることをおすすめします。
保育士の数が一番大きな要素になります。
人手不足が影響するということです。
仕事量が多い保育園ですから、時間外に作業をする必要があります。
保育士や職員が足りていれば人手不足にならず、何か突発的なことが起こらない限り残業は少ないといえるのです。
これらの情報は、直接聞けるなら園に聞くことがいいでしょう。
また、 求人案内がよく出ている場合は、慢性的に人手不足ということが言えます。
さらに、 シフトの組まれ方もポイントです。
一般的に保育園は8時ごろから19時ごろまでやっています。
交代の回数やどんなシフトパターンが組まれているかを探ることも必要です。
どうしても保育士で働きたい、でも残業がいやだという方は派遣保育士という方法もあります。
派遣は時給制がほとんどですので、残業もほとんどする必要がありません。
午前だけの勤務、午後だけ、夜だけという勤務です。
ただ、労働条件はしっかりと確認しておいてください。
※このコンテンツは保育士の方に作成していただいています。