保育士の給料の仕組み。給料が安い理由。海外の保育士との比較

子供を預かるという重大な責任を負う仕事なのに給料が安い……

そう考えて資格を持っているにも関わらず保育の現場から離れてしまう人は多くいます。

一体、なぜこういうことが起こるのでしょうか?

ここでは、保育所の金銭的な運営面について探ることで、保育士の給料が安い理由を解説していきます。

保育園運営の仕組み

そもそも、保育所には大きく分けてー

  • 認可を受けて運営する保育所等(認可保育所等)
  • 認可を受けずに運営する保育施設(認可外保育施設)

ーに分かれます。

認可外施設だからといって質が悪いなどということは決してなく、すべての施設が各都道府県が行う指導監督の元で運営されています。

しっかりとした運営はしているけれど、規模が小さいとか、特定の子供を受け入れるためにあえて認可を受けないという施設もあるのです。

では、それぞれの運営の仕組みを見てみましょう。

公立であれ私立であれ、認可を受けた保育施設に関しては、すべて行政から補助金が出されます。

この補助金に、保護者から支払われる保育料がその施設の収入となるのです。

一方、認可外の保育施設の場合は一部の補助対象施設を除き、ほとんどが補助金が給付されません。

それだと認可外の保育施設はやっていけないのではと思われるかもしれませんが、認可外保育施設の場合、各施設が自由に料金を設定できるのです。

認可された保育施設の場合、区市町村が保護者の収入に応じて保育料を決定するため、補助金と合わせて、毎年決まった額しか施設の収入として入ってこないということになります。

保育士の給料が安い理由

これまでの解説で、保育士の給料が安い理由がある程度わかったのではないでしょうか?

つまり、認可保育園の場合、収入を補助金と毎年ほとんど変わらない保護者からの保育料に頼っています。

補助金は児童の人数によって決まりますし、前述の通り、保育料は行政が決定するわけですから、保育施設がどれだけ経営努力をしても、施設全体の収入が上がりにくいという構造ができてしまっているのです。

そうなれば、おのずと人件費も上がりにくくなるというわけです。

認可外の場合は、施設がサービスに応じて保育料を決定できますが、よほどセレブ向けではない限り、あまり大きく値段を上げられないので、こちらも人件費は抑制されがちになるのです。

私立と公立の給料の違い

一方、保育士が給料を上げるためにできること 知らないと損なことでも解説していますが、同じ認可保育施設でも、公立と私立には保育士の給与額に大きな差があります。

認可保育施設の場合、補助金と保育料のみが収入なわけですから、ある年から急激に施設の収入が上がるということは起こりません。

そのため、民間の認可保育園に勤務する保育士は、初任給からほとんど給料が上がらないという状況が発生してしまいます。

一方、公務員である公立の保育士の場合は、勤続年数に応じて給料が順調に上がっていく傾向があります。

残念ながらこれに大きな理由はありません。

あえて言うのならばー

  • 公務員だから

ーという理由しかありません。

海外の保育士との比較

日本の保育士の待遇があまりよくないというのはこれまで解説してきた通りですが、海外の保育士の待遇はどうなっているのでしょうか?

国によって全体の給与水準は大きく異なるため、単純な比較はできませんが、ここでは日本と比較的生活レベルが近い、アメリカとカナダの給与を調べてみました。

アメリカの場合

アメリカは日本とは異なり、保育士の免許は必要ありません。そのため、高卒で保育士になる人もいるのですが、そのままだと昇進等が見込めないため、短大や大学で幼児教育に関する学位を取って保育士になる人が多くいます。

では、しっかりと大学まで出て、一体どのくらいの給料がもらえるのでしょうか?

残念ながらアメリカでも、保育士の待遇の悪さについては問題になってしまっています。

一概には言えませんが、アメリカの保育士の時間給は8ドルから9ドル程度と言われています。つまり、時給900円ほどしかもらえないのです。

場合によっては、日本よりも収入が低くなるということが起こり得ます。

カナダの場合

カナダでも、保育士の給料はほかの職種に比べるとあまり高くないと言われていま す。しかし、アメリカや日本ほどではないというのが現状のようです。

時給でいうと、15~22カナダドル程度。1カナダドルは76円ほどですから、1,140~1,600円という計算になります。

1,500円だとしても、月24万円ほどなので、悪いとはいえ日本ほどではないという給与水準と言えるでしょう。

上記はあくまでも、アメリカとカナダの2カ国の話です。

全体的に給与水準の高いドイツなどの国になると、日本円にして30万から40万円ほどの収入を得ている保育士さんもめずらしくないといいます。

しかし、いずれにせよ、保育士の待遇については世界的に見て何らかの問題を抱えているということが言えるのかもしれません。

海外で保育士をするという選択肢

最後に、あくまでも参考として、海外で保育士をするという選択肢について説明します。

海外で保育士をするということは、決して現地の子供たちの保育をするということではありません。

一昔前のように、大企業に勤める一部の駐在員のみが海外に行くということはなくなり、中小企業に勤務する人が海外に駐在することはめずらしくなくなりました。

さらには現地採用で働く日本人も増えています。

こうした日本人が増えれば、おのずと教育方面でのニーズも増加し、海外の一部地域では、日本人子女を対象にした幼稚園や保育施設が増え、場所によっては人手不足が起こっています。

実際にインターネットで検索すると、幼稚園教諭や保育士の求人を多く見つけることができます。

ただし、決して給与水準が高いとは言えません。

アメリカの場合は月1,200~1,500ドル程度で、日本よりも厳しい待遇というケースが多く見られました。

一方、アジアの国では少し事情が違います。

たとえば、日本人の滞在者数が数万人いると言われるタイに目を向けてみましょう。

タイの場合、外国人の最低給与に関する法律があるため、一部を除き月給5万バーツからという求人が多く見られます。

1バーツはおよそ3円なので、月15万円くらいということになりますが、経済発展著しいタイとはいえ、まだまだ物価は安いので、同じ15万円でも日本よりもはるかに良い暮らしができます。

もちろん、毎日日本食を食べなければダメという人には難しいかもしれませんが、もしも、現地の食べ物でも問題なく、文化の違いによるストレスに耐えられる人ならば、こうした国で働くというのもひとつの選択肢と言えるのかもしれません。

参考サイト:東京都福祉保健局「認可外保育施設について

※このコンテンツは保育士の方に作成していただいています。

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